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January 27, 2005

18、暗夜飛行

ちょっと長めの詩を書こうと思います。
これも「母から聴いたこと」です。
とぼうとしないぼくが叱られる詩ですが、もし、あなたにも、とびたいのにとび立てないところが
あるとしたら、どうぞこれを一読してください。
(2/4 「10、かなしみ」を一部修正しました。確かめてください。)


 暗夜飛行   あらかみさんぞう

さあ
思いきって
とび立ちなさい
闇夜のくにから

大丈夫
とぼうと思えばとべる
空をとぶために、あなたは生まれてきたのだから
むかしむかしあなたは
自由に空をとんでいたのだから

信じられない?失敗がこわい?安全地帯を離れたくない? 
そこにはみんながいるしそこにいれば
誰にも後ろゆび指されることもないし
危険を犯すようなことはしたくないというわけ?

それでは暗闇のなかで
外の世界を見ることもなく感動も喜びも知らないまま
じっと冬眠をつづけますか
それであなたの腹の虫は収まるのですか

たしかに危険はある、なにが起るか分らない
きっとまわりも心配してバカなことはやめろ、というかもしれない
失敗すれば、そらみたことか
安全地帯にいる人ならそういうかもしれない

それでもあなたは光にむかう空をとぶのです
それがあなたの自然だから
あとはただ自分で選ぶのです
危険なほうか、安全のほうか、生きるほうか、生きないほうか

なぜとぶかとばねばならないか
そんな自問自答はまったく無駄なこと
その間にも地球はまわってしまいます
果実は熟れきってしまいます

生きるよろこびをつかむのです
あなたのまま、弱いままでいいのです
自分の力でとぶのです、自分の翼で羽ばたくのです
あなたの生きる力、生きものの力を試すときがきたのです

さあ
暗闇の
向こうへ
ちから
いっぱい
地を蹴りなさい

そう!

それで
いい
ほら
身体が
浮いたでしょう!
ほら、翼が
使えるでしょう!
あとは自分を信じて
からだにまかせなさい
いのちにまかせて羽ばたきなさい
羽ばたきをつづけなさい

もう空は、見上げるところじゃない
空はあなたのためにある、あなたは空のためにある
あなたの胸ははじめてのよろこびに震えるでしょう
世界は釣り上げた魚のようにあなたの手の中で震えるでしょう

成層圏から
ながめてごらんよ
円い地球が夜明けを孕んで
青い夢のように浮かんでいるでしょう

森があり、川があり、
湖があり、山岳があり、灼熱の砂漠があり、
真っ青な海があり、厳寒の極地があり、溶岩の流れる噴火口があり
それらぜんぶで地球です
なにひとつ欠くことはできない

肉体があり、精神があり、欲望があり、感動があり
後悔や怒りや悲しみがあり
どろどろの激情も渦巻いている
そんなあなたから
なにひとう引くことはできないでしょう

そんなあなたをまるごとかかえてとぶのです
とぶよろこびをとぶのです

おやおや
見てごらん!
あなたがとんだので
みんながとびはじめたよ
夜明けの光のなかを
一緒になってとびはじめたよ!

鳥や昆虫や魚や蛇や哺乳類が、とんでいるよ
百舌や椋鳥や鶇や鴨や鶴や、鰯や鯵や鰹や黒鮪や座頭鯨が、とんでいるよ
トカゲ、ヤモリ、アマガエル、ヤマカガチ、アオダイショー、カメレオン、イリオモテヤマネコ、アカメウオ、ムツゴロー、ジンベイザメ、ユキヒョウ、ニシキヘビ、シマフクローマウンテンゴリラ、クロサイ、アフリカゾウ…みんなみんな空をとんでいるよ!

もうあなたは、一人ぼっちじゃない、いのちの仲間が一緒です
羽ばたきは力づよく、心臓は正確に脈を打っています
全身はとぶことに満たされています
疑うことなどなにもない、夜明けの光のなかを喜びに満ちあふれ
ただとびつづけ、とびつづけ

どこへ行く?
いつまで飛ぶ?
そんなことは知ったことじゃない


*少し手を入れました。多分みるたびに修正したくなるでしょうが。
イラストはもうちょっとあとで入れます。

さんぞう。2/3

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January 21, 2005

17、母から聴いたこと

17、へたでもいい  

あらかみさんぞう

好きなら
絵を描きなさい
文章を書きなさい

へたでも
絵が生きてればいい
と中川一政はいいました

不器用でもいい
見かけが器用にできてるものは長もちしない
と落語の中で江戸の名人指物師長ニはいいました

へたでもいいのです
おもいを込めて描きなさい
いのちが答えを出してくれます

あなたが生きていればいいのです
生きるよろこびがあればいいのです
そこに感動が生まれるのです


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January 20, 2005

16、にらめっこ

16nirameko_
16、にらめっこ

あらかみさんぞう

 さびしくて
 たまらなくなったら
 にらめっこしましょう

 ーあっぷっぷ!

ちょっとてれくさくても、にらめっこしましょう
わらいたいのをこらえて、あいてをにらみましょう
すこしおちついてきたら、おたがいをみつめましょう
ただしずかにおたがいを、じいーっとみつめあいましょう

あなたがみつめると、しぜんにあなたはみつめられるでしょう
じーっとみつめると、やっぱりじいーっとみつめられるでしょう
みつめてみつめられて、なんだかきもちがうっとりとしてくるでしょう
みつめてみつめられて、こころのさびしさがゆっくりとけていくでしょう

 ひとりぼっちだと
 かんじたら
 にらめっこしましょう

 ーあっぷっぷ!

もっともっと、ふかーくあいてをみつめてみましょう
ひとみのおくの、かくれたこころをみつめあいましょう
いつのまにか、むねのあたりがかるーくなってきたでしょう
いつのまにか、こころにあったかなものがうまれているでしょう

みつめてみつめられて、わたしとあなたのくべつがつかなくなるでしょう
どこからわたしでどこまでがあなたなのかくべつがつかなくなるでしょう
あなたとわたしがつながってじぶんになるのかとたがいにきづくでしょう
にんげんていいねえ、とつたえあうふたりのなみだはとまらないでしょう
                  
 じぶんがすきに
 なれなくなったら
 にらめっこしましょう

 ーあっぷっぷ


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January 18, 2005

15、母から聴いたこと

あなたは
できないのではない
やらないだけです

あなたは
みえないのではない
みてないだけです

あなたは
はしらなくてもいい
あるいていけばいい

やりたいこと
いきたいとこをめざして
あるきつづければいい

とちゅうでとまらなければ
いつかは
そこにつくのです


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14、五才

なんであのとき
ぼくが見たものを
一緒に見てくれなかったの?

なんであのとき
ぼくが話したことを
聴いていてくれなかったの?

あのときから
ぼくは独り言を
いうようになったんだ

あのときから
ぼくの人生が少しづつ
変わっていったんだ

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January 16, 2005

13、キャッチボールしよう

ほら、ぼくが
投げるよ
受けとって!

受けとったら
ぼくに
投げかえして!

OK!
あなたを
受けとったわ

こんどは
わたしが
投げるね

しっかり
わたしを
受けとってね!

ナイスボール!
ナイスボール!

ぼくが投げて
きみが受けて
きみが投げて
ぼくが受けて

なんでもない
このくり返えしが
どうしてこんなに嬉しいのだろう

どうして
生きているって
感じがしてくるのだろう


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12、生きるのは?

○→○   つたえることです
○⇄○   互いにつたえあうことです
 ∞    つながることです
 ◎    二人が一つになる(あなたの母数が2になる)ことです
◎×◎   だれも一人じゃない(あなたの総和は2×2になる)のです
1+1=4 わたしはわれわれになるのです
      われわれになることが生きることです
      1+1=4になって進化することです

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11、菩薩の子

11
山に愛されている子
海に愛されている子
私の愛する子

あなたは私のこども
自然のこども
愛のアキーラ

遠くまで行きなさい
菩薩になって
帰ってきなさい

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January 15, 2005

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January 14, 2005

10、かなしみ

ぼくは、ふいに
黙ってしまうことがあるんだ
黙ってしまうとなんだか
哀しくなってくるんだ

 あなたは
 むかしのかなしみを
 かなしみおえてなかったのね

 むかしむかしの
 かなしみたりなかったかなしみを
 おもいだしているのね

山にいくと
山が哀しくなってくるんだ
海にいくと
海が哀しくなってくるんだ

 あなたは
 むかしのかなしみを
 まだゆるしてなかったのね

 理由もなくあなたを哀しくさせる
 むかしのかなしみ、むかしむかしのかなしみを
 のこらずおもいだしあげなさい

あのひとのこと?そしてあのときのことー?
あのときのこと?そしてあのひとのことー?
もう駄目だ、もう涙でなにもみえない
ぼくをだきしめて、かあさん

 もうむかしのかなしみをのこらずかなしんでしまいなさい
 むかしのかなしみをのこらずおわらせてあげなさい
 なにもかもゆるしてあげなさい

 そして
 あたらしいかなしみをかなしみなさい
 あたらしいよろこびをよろこびなさい


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9、母から聴いたこと

私のなかには、父オヤがいて、母オヤがいて、オトナがいて、コドモがいます。
父オヤは力、母オヤは愛、オトナは計算、コドモは命のままです。

先週、私はふと気づいたら、ずっと昔に亡くなった母と、交信していました。
私のなかのコドモが母と遭遇したのです。
むろん年齢的にいえば私は子供などではあり得ない。
だが、そこに帰ることはできます。
そのとき、私のなかのコドモの問いに母の声がはっきりと答えてくれたのです。
コドモが問い、母が答えてくれたー
私にとっては、それだけで十分に思います。

私はこの人生を荒々しく生き、いまも生き方を探しつづける「途中の人」です。
あなたの、ふと立ち返るコドモの心に、これを伝えたい。

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January 10, 2005

8、見えなくなったら

8suwaru見えなくなったら
坐りなさい
はんがんに目をつむりなさい
しずかにしずかに息を吐きなさい

やがて地球の
こっち側も、むこう側も
はっきり観えてくるでしょう

海の魚たちの朝の会話
夢のなかで話しかけてくるご先祖の声
みんなはっきり聴こえてくるでしょう

さびしくなったら
坐りなさい
そして菩薩に会いなさい
そしてあなたが菩薩になりなさい

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January 06, 2005

愛のアキーラ7、やるべきこと

7things_to_do

遠くまで

行きなさい

淋しくなったら

帰ってきなさい

そしてまた

遠くへ

行きなさい

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愛のアキーラ6、不在

6not_here

ただいま!

ただいま!

ーーー

ただいま!
ただいま!
ただいま!


ただいま
 

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愛のアキーラ5、理由

5reasn

ぼく、泣き虫?

ー子どもは泣くものよ

かあさんも泣くことあるの?

ー一度だけ泣いたよ

いつ?

ーあなたを産んだときよ

どうして?

ーうれしくてね

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愛のアキーラ4、死んだら

_4
死んだらどうなるの?

ー来たところにもどるのよ

ぼくなにもおぼえてない

ー死ぬときに思い出すのよ

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January 04, 2005

愛のアキーラ3、安心

3ansin

大丈夫

安心しなさい

わたしはここにいるよ

いつもあなたのそばに

そしてどこにでも

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愛のアキーラ2あなたの役割

2
 この地上に
 あなたが
 なにを与え
 なにを受けとるために
 来たのか
 忘れないでね

 いつも
 ほんとうの自分を
 思いだしてね


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愛のアキーラ1、問い

_1


ぼく、死んだの?


いいえ、生まれたのよ

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愛のアキーラ

ーはじめにー

   <愛のアキーラはあなたの中にいる>

        
それは、あなたの中の愛のコドモです。
それは、またあなたの中の愛の母性や父性や
ご先祖様です。

愛のアキーラは、あなたのなかのコドモの話を聴きます。
あなたのなかのコドモだけに話をします。
あなたがいま親であっても大人であっても子供で
あっても、あなたのなかの生まれたてのコドモの心と
向かい合います。

世間や打算はアキーラに通じません。
オヤの傲慢や支配はアキーラに通じません。
アキーラと話したとき、忘れそうになったあなたの
大人の中のコドモの心、閉じこめてきた親の中のコドモの心も
目を醒ますでしょう。

コドモは変化し成長します。
どんなときも喜びや幸福を感じることができます。
アキーラと話しはじめたとき、あなたは喜びのなかで
もう一度生まれてくることを知るでしょう。
限りなく成長していく自分を感じるでしょう。

アキーラに話しかけてください。質問してください。
愛のアキーラは貴方自身のなかにいます。

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January 03, 2005

誰の手先?

2

これから我流の書を紹介します。

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愛のアキーラ

_

<母から聴いたこと>
<アキーラ人生相談>

「母」からのメッセージ
小さな愛のスピリチュアルメッセージ
キャラクターは、 <愛のアキーラ>
恋人たち100人アンケートをもとに証す21世紀の愛の世界

競争から奉仕へ、経済から精神原理へ反転のとき、あなたの
中の天使が目を覚ます。

いまこそ、スピリチュアルな愛を分かち合う、
愛の手引書、愛の人生相談、愛の詩絵本21世紀へ、
愛のカウンセリング

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January 02, 2005

新作

本格的に始めます

最初に紹介する詩はこれです

『古賀志山の原人』   あらかみさんぞう

ずっと、ずっと大昔/人と動物がともにこの世に住んでいたとき/なりたいと思えば人が動物になれたし/動物が人にもなれた/だから時には人だったり、時には動物だったり、互いに区別はなかったのだ/そしてみんなおなじことばをしゃべってたのだ/ *南東アラスカエスキモー族の神話

  1、

暗闇に
石器時代人がいるー

ちょっと気味がわるい
ぼくが目をつむると、目をひらく
真夜中ぼくが眠ると、むっくり起き上がる
捕まえようとすると、姿を消す

なんだかおもしろくない
あいつは好きなことを好きなようにやっている
木や石や鳥や虫とも気持ちを通わせ自由に会話しているらしい
ぼくは真面目で几帳面で重い吃音症だというのに

あいつはコトバを話さない 
そのくせ全身にコトバが溢れている
ぼくなんか話そう話そうとコトバを追いかけているうちに
話したいことが通り過ぎていってしまうのに
だからドモリになってしまったのにー

もうゆるせない
夜、机に向かって教科書を開こうとすると
そんなことはムダだからやめたほうがいいよ
それより耳を澄まして森の茸の胞子の飛ぶ音を聴いてみないかなどと囁く

思わずうとうとしていると
すうっとぼくから抜け出していく
親から禁止されている窓から出て石塀を伝わって暗闇に消える
きっとぼくが怖がっている月明かりのワリ山を徘徊しているにちがいない
そこでなにをしているのだか

  2、

ーあの頃、家の周りにはまだ
深い森があり
暗い夜があり
曲がり角には、神々が住んでいました

そしてぼくは、中学生になりました
真面目なよい生徒に、なろうと決心しました
それなのにやっぱりあいつが、本性をあらわします
校則違反、粗暴行為の常習犯だとたちまち問題児の烙印を押されてしまったのですあれはぼくじゃないのに、ぼくは模範生なのに、まったくいい迷惑です

生活指導の女の先生はよそいきの言葉で長い説教を締めくくりました
「これからは人並みの人間になりますか、それとも退学なさいますかー」
ぼくは怖くなってすぐに謝ってしまおうとしたのですが
あいつは涼しい目で先生を見上げながら何か呟いています

—人はイヌやネコやケダモノとはちがうなんてウソ マジメなよい子なんて
バカ 話しあうなんてムダ ぼくらは話をきかない、本をよまない、人並み
にならない 大地にふれる  匂いをかぎ、舌でなめ、水にもぐり、イノチに
きく 誰もぼくらを檻に入れることなどできない ぼくらの自然に蓋をする
わけにはいかないー

授業が終わると、野球をしました 一の沢ニの沢で魚をとりました
裸馬を乗りまわしました イタズラして種牛に追い掛けられました 
学校のワルを集めタバコを吸いました 他校の生徒を襲撃しました
だがそうしているうちにぼくの思春期は弓のように張りつめました
その頃、一人の女生徒に心を奪われていました
ぼくにはホトケサマにみえました

ある夜、神社の林の中でぼくは飛びかかりました 
ホトケサマを地面に押さえつけライオンのようになめました 
草食動物のような悲鳴をあげてホトケサマはぼくの腕のなかでもがき
ぼくの手首にがぶっと噛みつき、ぼくの手を振りはらうと街道の方に逃げました
びっくりして反対側の暗闇の方へ隠れようとするぼくに、あいつが叫びました
ー逃げてはいけない、大切なら、追いかけろ 捕まえて、抱きしめて、血をかよ
わせろ 後悔してはいけない、ホトケサマにも自分にもいけないことをしたまま
途中でやめるのはもっといけないー

だがどうしてあいつの言いぐさにぼくが従わねばならないのか
ホトケサマは街へ、だがぼくは暗闇のなかへ、全速力で走りました
そのまま走りつづけました ぼくはなんだかすべてが終わったと感じました 
自分を(ぼくもあいつもー)消してしまいたいと思いました 
夜の奥へどこまでも走っていきました

 3、

ぼくは、古賀志山の崖の下にいました
剥き出しになった闇の裂け目が一気に蒼天に立ち上がっています
太古から人はここに来て自分を生みだす力を受けとりました
崖は地球のいのちの通路です

ぼくは崖に呼びかけます
ぼくの胸に言霊があふれ崖の内部に共鳴します
風は崖を吹きぬけぼくを吹きぬけて風になります
崖とぼくのいのちが同調して響きあいます

ぼくは西陽に温められた磐肌にからだを密着させます
女神の襞につつみこまれ、細胞は快感にふるえだします
そのふるえはつつみこむものにも波のようにひろがります

やがて足の裏から会陰から頭頂へ
ぼくがゆっくりと融けていきます
そして一匹の蜥蜴になります

一足一足、崖をのぼります
ぼくが、崖を、抱きしめると、崖も、ぼくを抱きしめます 
崖が、ぼくを、抱きしめると、ぼくも、崖を、抱きしめます
一匹の青い蜥蜴が、身を捩らせながら、自然の女体に分け入っていきます

 4、

転落事故が、その直後に起りました
オーバーハングで身動きがとれなくなっていたぼくが
やっと右手を延ばして掴んだ細い椎の木が根元から抜け落ちてしまったのです
ぼくの身体は空中に放りだされ一回転して落下していきます 

落ちていくぼくを真上からもうひとりのぼくが見ています
からだが鷹の巣のような岩棚に叩きつけられる瞬間も見ました
岩棚には柔らかな枯れ草が敷き詰められていたことも見届けました
どうやら助かったらしいー

鯨のように息を吹いたあと少しづつ意識が戻ってきました
痺れているからだの底からイノチが殺到します
ぼくは確信しました
《ぼくは生み落とされたのだ!》

柔らかな夕陽が山を包んでいます
遠くの人里に夕餉の煙りがのぼっています
生まれたばかりのぼくは古賀志の胸に抱かれています
いつのまにかぼくらは一つになっています
生きているものすべてがぼくと呼吸をあわせています
生きているものすべてと一つになっていく喜びをうたっています

 5、

それからは、ぼくは夢を見ないで眠りました
夜の彷徨は、止まりました 
昼の吃音は、すっかり治りました

神社の森は、住宅団地になりました
ワリ山には、PC工場が建ち並びました
ぼくは七度、死にそこないました

ぼくのなかの石器時代は滅びたのでしょうか
いいえ、ぼくの暗闇にもうひとり
息を潜めています

どんなに足掻いても、ぼくらは死んでいくものと死ぬことのないものです
終わるものと終わらないものです
一つにはなれないものと一つになろうとして生きかわり死にかわりしています

宇宙の日々を思い出しながら今を生きています
地上のあらゆる生命と波長を合わせながら、不思議な合体のときをめざして 
終わることのない、いのちの舞踏を続けています

ぼくは、しばし評価と計算と独語を中断して
目の前の世界のあるがままにある豊かさと空しさを味わおうと思います
目の前の世界をともに生きる喜びと哀しみを歌おうと思います

あふーあふー 
あふーあふー
古賀志の崖はいまもぼくのなかに聳えています


注 古賀志山583mー宇都宮北西、日光連山の手前に鋸歯状に続く山並み。
  コガシヤマのコガシは動詞コガス(扱)の名詞形、草木等を引き抜く、根こぎするなどの意。
  また、コカス(転・倒)=倒す転がす横にする滑らす落とすなどの意がある。
  私は部屋の正面にいつもこの古賀志の崖を見ながら成長した。

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あけましておめでとうございます

わたしの詩と書を紹介します

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