March 29, 2005
March 25, 2005
32、いのちの便り
いのちの便り あらかみさんぞう
ミケランジェロはなんの変哲もない石の塊のなかに
ダビデとピエタを見い出した
絵は板のなかに宿っている
私はただ板が言うことをきいているだけだ、と棟方志功は言う
理論物理学がカオスと見なすものの中に
詩人は秩序をみつける
木の絵山の絵が人を感動させるとしたら
木の仏山の仏が画家を通して現れたときだけだ
アタマで計算されただけの表現に力はない
つくられた価値の模倣は細工師の仕事だ
無意識のカオスの奥から届けられたいのちの便り
それだけが私たちを激しくゆさぶる
それは論理でも科学でもない
魂のみなもとへ身を投げかける者が受けとる美の贈りものだ
March 24, 2005
31、君に
君に
文を書くということは
言霊を授かるということだ
絵を描くということは
その魂に導かれるということだ
描こうとしている
木や山の命に自らを投げかけることだ
世界の豊かさそのものになりきることだ
世界の豊かさそのものが語りはじめるのだ
ー木の仏山の仏よ現れて100の想いを描かせ給え
March 22, 2005
30、あなたの隣りに
あなたの隣りに
さようなら!
とさりげなくいって
帰りかける
あなたの隣りに
もうひとり
あなたがいます
あなたの
隣りのあなたは
じっと前を見つめたまま
わたしを引きとめて!
と無言で
うったえています
March 17, 2005
29、分かち合うもの
分かち合うもの あらかみさんぞう
仙石原の林の中に、
一本の美しい姫娑羅の木があります
ぼくは疲れがたまって耐えられなくなると会いにいきます
滑らかな木肌に触れ、匂いを嗅ぎ、樹液の音を聞き、
ときどき話しもします
そして一時間ほど根元で眠ります
目がさめると、ぼくのなかで何かが入れ替わっています
それからぼくは満たされて帰ります
あの美しい姫娑羅はぼくのこいびとです
私たちの生命は、外部の環境と物質、エネルギー、
情報を出し入れし、交換し合う開放系のシステムです。
生きるとは、その外界と相互作用する働きです。
地球の自然や他の人間や動植物や微生物などの「他者」と
互いに依存しあい、支えあい、やりとりを交わすことです。
たとえば、原子レベルのやりとり。計算によると私たちが一回
呼吸するたびに吸い込まれる空気の中には、過去3週間のあい
だに他の人たちが呼吸した10の15乗個の原子と、これまで
地上に生きてきたあらゆる人たちによって呼吸された100万
個以上の原子が含まれています。
また私たちの腸の中には、数兆個のバクテリアが生息し宿主で
ある私たちと共存共栄分しながら生命を支えあっています。
生命は「分かち合うもの」です。
私は、自分だけでは自分でさえありえない。私は「私たち」で
あるとき私なのです。虫や鳥や魚や樹木や川や海や地球、それ
らは私の一部であり、私はそれらの一部でもあります。
私たちは、分かち合うことによって生きそして生かされる、
はるかな生命誕生に始まるいのちの相互作用の連鎖の中にいます。
28、春、このとき
春、このとき
きのう気づかなかった
小さな雑草の花が咲いただけで
どうしてこんなに嬉しくなるのだろう
夜のうちにつくられた
もぐらの山の柔らかな感触が
どうして足の裏を心地よくするのだろう
堆肥の藁の下に甲の幼虫をみつけたら
きみはきっと子供のような
声をあげるだろう
丘のうなじが光ってみえるだろう
雲の上の青の深さに
気持ちが吸い寄せられるだろう
春、このとき
ぼくは自分を開けっ放しにして
満ちてくるものを受けとるだけだ
March 13, 2005
27、もし、ぼくらが
もし、ぼくらが
むかしの記憶に
縛られていなかったら
もし、ぼくらが
エゴという眼鏡を
掛けていなかったら
もし、ぼくらに不安や恐れがなかったら
曇りない五感のままに
世界を見ることができたら
もし、ぼくらが
この星に初めてやってきた
宇宙人だったら
地球の生きものの
不思議さ、美しさに
驚いて驚いて息つくひまもないだろう
あなたの
不思議さ、美しさを
決して見逃すことはないだろう
ひとつひとつの
奇蹟のような出会いを
何ひとつ無駄にすることはないだろう
March 12, 2005
26、出会う(2)
さわってもいい?
さわって
だきしめてもいい?
だきしめて
花のかおりがするね
石のにおいがするね
ぼくがとけていく
わたしがとけていく
こわくない?
こわくない
ふたりがひとつだね
ひとつでふたりだね
25、出会う(1)
そばにいてもいい?
そばにいて
さわってもいい?
さわって
きみの手は
やわらかいね
あなたの手は
ごつごつしてるね
このままにしていていい?
このままにしていて
なんだか安心するね
とっても安心するね
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