29、分かち合うもの
分かち合うもの あらかみさんぞう
仙石原の林の中に、
一本の美しい姫娑羅の木があります
ぼくは疲れがたまって耐えられなくなると会いにいきます
滑らかな木肌に触れ、匂いを嗅ぎ、樹液の音を聞き、
ときどき話しもします
そして一時間ほど根元で眠ります
目がさめると、ぼくのなかで何かが入れ替わっています
それからぼくは満たされて帰ります
あの美しい姫娑羅はぼくのこいびとです
私たちの生命は、外部の環境と物質、エネルギー、
情報を出し入れし、交換し合う開放系のシステムです。
生きるとは、その外界と相互作用する働きです。
地球の自然や他の人間や動植物や微生物などの「他者」と
互いに依存しあい、支えあい、やりとりを交わすことです。
たとえば、原子レベルのやりとり。計算によると私たちが一回
呼吸するたびに吸い込まれる空気の中には、過去3週間のあい
だに他の人たちが呼吸した10の15乗個の原子と、これまで
地上に生きてきたあらゆる人たちによって呼吸された100万
個以上の原子が含まれています。
また私たちの腸の中には、数兆個のバクテリアが生息し宿主で
ある私たちと共存共栄分しながら生命を支えあっています。
生命は「分かち合うもの」です。
私は、自分だけでは自分でさえありえない。私は「私たち」で
あるとき私なのです。虫や鳥や魚や樹木や川や海や地球、それ
らは私の一部であり、私はそれらの一部でもあります。
私たちは、分かち合うことによって生きそして生かされる、
はるかな生命誕生に始まるいのちの相互作用の連鎖の中にいます。
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Comments
さんぞうさんの詩は
ピュアでいつもきらきら輝いています。
どちらかというと
長い言葉がつながっているものよりも
短く凝縮された詩が好きです。
ストレートに伝わってくるから。
私事ですが
仕事の関係で
ビデオに撮られた自分の姿を見ました。
「自分の知らない自分」
そこにいたのは
いちばん嫌いなタイプの人の姿で
一気に落ち込みました。
でもずっと、この姿をさらしてきたんだよな~~~
なんて恥ずかしい。
でもずっと
そういう私を周りの人たちは愛してくれてるんだよな~~~
これってすごいことだよね。
また読むね。
Posted by: みみ | March 20, 2005 10:12 AM
お久しぶりです。
日々忙しく生活しているときに、さんぞうさんの詩を読むとほっとします。
忙しくがむしゃらに動いていると自分のことでせいいっぱい。でも一人じゃ生きていけないんだよなぁ。
ちょっと立ち止まる時間が必要だなと思いました。
またお邪魔します!
Posted by: たなかなほ | March 22, 2005 09:12 PM