32、いのちの便り
いのちの便り あらかみさんぞう
ミケランジェロはなんの変哲もない石の塊のなかに
ダビデとピエタを見い出した
絵は板のなかに宿っている
私はただ板が言うことをきいているだけだ、と棟方志功は言う
理論物理学がカオスと見なすものの中に
詩人は秩序をみつける
木の絵山の絵が人を感動させるとしたら
木の仏山の仏が画家を通して現れたときだけだ
アタマで計算されただけの表現に力はない
つくられた価値の模倣は細工師の仕事だ
無意識のカオスの奥から届けられたいのちの便り
それだけが私たちを激しくゆさぶる
それは論理でも科学でもない
魂のみなもとへ身を投げかける者が受けとる美の贈りものだ
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