このとき
きのう気づかなかった
小さな雑草の花が咲いただけなのに
どうしてこんなに嬉しくなるのだろう
夜のうちにつくられた
もぐらの山の柔らかな感触が
どうして足の裏を心地よくするのだろう
堆肥の藁の下にカブトの幼虫をみつけたら
きみはきっと子供のような
声をあげるだろう
生の無数の死体の上に
どうしてこんなに清らかな緑が芽生えるのだろう
鮮やかな紅色の花になって咲き誇ることができるのだろう
やがて丘のうなじの上の
白い雲の上のあの青の深みに
ぼくは吸い寄せられていくだろう
春、このとき
ぼくは自分を開けっ放しにして
満ちてくるものを受けとるだけだ
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