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May 17, 2006

14、にらめっこ

 

 さびしくてたまらなくなったら
 にらめっこしましょう
 あっぷっぷ!

わらわないで めをそらさないで
まっすぐにおたがいをみつめてみましょう
はずかしかったらはずかしさをかんじながら
ばかばかしいとおもったらばかばかしいとおもいながら
それでもまっすぐにあいてをみつめてみましょう

はじめてめとめがあうとドギマギするでしょう
でもそのときじぶんにむけられたしせんをうけとめてみましょう
するとそのときじぶんもしぜんにあいてをみつめているでしょう
あなたがみつめるときしぜんにあなたはみつめられているでしょう
じーっとみつめるとやっぱりじいーっとみつめられているでしょう

 じぶんをすきになれなくなったら
 にらめっこしましょう
 あっぷっぷ! 

へんけんをすて かんがえるのをやめ 
まっすぐにおたがいをみつめてみましょう
みつめるあいてもみつめられるじぶんもうけいれながらみつめましょう
いつのまにかあなたのこころをとざしていたものがとけていくでしょう
よわいじぶんもにげたいじぶんもきらいなじぶんもきえていくでしょう

みつめみつめられてこころはふかくやすらいでいるでしょう
ふたりのこきゅうもこどうもぴったりシンクロしているでしょう
もうわたしとあなたというくべつさえつかなくなっているでしょう
わけもなくなみだがあふれてきてもただふかくみつめあっていたいでしょう
あたたかなふたつの「いのち」と「いのち」になってみつめあっていたいでしょう

 もうさびしくなんてないね
 もうひとりぼっちじゃないね
 あっぷっぷ!

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13、にょらい

はんがんの
ぼさつに
なりなさい

とおくまで
どこまでもどこまでも
いきなさい

さびしくなったら
なんどでもなんどでも
かえってきなさい

いってかえりを
くりかえしくりかえしくりかえして
にょらいになりなさい

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12、恐竜

 恐竜

あふう
 あふう

まもなく
孵化します

 あふう
 あふう

殻の中で
ぼくが目ざめます

 あふう
 あふう

まもなく
恐竜が出てきます

 あふう
あふう

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May 10, 2006

11、花と君

 花と君


花があまりに
不思議なのに驚いた

君があまりに
美しいのに驚いた

花は君
君は花

花は君のように美しい
君は花のように不思議

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詩集 暗夜飛行 Ⅱ 

10、『古賀志原人奇譚』    

ずっと、ずっと大昔/人と動物がともにこの世に住んでいたとき/なりたいと思えば人が動物になれたし/動物が人にもなれた/だから時には人だったり、時には動物だったり、互いに区別はなかったのだ/そしてみんなおなじことばをしゃべってたのだ/ *南東アラスカエスキモー族の神話


  1、

ぼくの暗闇に
石器時代人がいます

ちょっと気味がわるい
真夜中ぼくが眠ると 目をひらく
ぼくを金縛りにして むっくり起き上がる
やっとぼくが声をあげると 姿を消す

なんだかおもしろくない
あいつは好きなことを好きなようにやっているようです
木や石や鳥や虫と気持ちを通わせ自由に話しているみたいです
ぼくは真面目で不器用で吃音症だというのに

あいつは殆ど言葉をつかわない 
そのくせ全身にコトバが溢れています
ぼくなんか話そう話そうとコトバを追いかけているうちに
話したいことが通り過ぎていってしまうのに

もうゆるせない
夜 机に向かって教科書を開こうとすると
そんなムダなことはやめろ
それより森に行って茸の胞子の飛ぶ音を聴け などと嘯くのです

思わずうとうとしていると ふっとぼくから抜け出し
親から禁止されている窓から出て石塀を伝わって暗闇に消えていく
きっとぼくが怖がっている月明かりのワリ山を徘徊しているのです
そこでなにをしているのだか


  2、

鬱陶しい夏が来て
バリカンの歯から散った毛が瞼に落ちるのを堪えるたびに
にきび面の悪相が出来あがりました

中学生になったぼくは
すぐに「校則違反」をくり返しました 問題児の烙印を押されました 
その挙句「反省の機会を与えるため」停学処分を受けました あいつのお陰でー

だがぼくが悄げていると あいつは耳打ちしました
ーハンセーなんてするものか
ーオリになんて入るものか フタなんてされるものか
ーホンなんて読むものか ジなんて書くものか イイコになんてなるものか  

停学しても野球だけは続けました 一の沢ニの沢で鰌を釣りました
裸馬を乗りまわしました 種牛にイタズラして追い掛けられました 
他校の生徒を襲撃しました ワルを集め喫煙クラブを結成しました 
その間にぼくの思春期は弓のように張りつめていました
そして一人の女生徒に心を奪われました 
涼しい眸を一目みただけでホトケサマであることが分りました
ぼくは出会うたびに憧れをふくらませ神棚に写真を祀って拝みました
だが あいつは違いました

ある夜それは唐突に起きました
神社の森のなかでぼくはホトケサマに飛びかかっていました 
獲物を捕らえる獣のように地面に押さえつけました 
だがホトケサマは草食動物のような声をあげて腕のなかで激しくもがきました
一瞬ぼんやりするぼくをホオケサマは信じられない力で撥ねのけ
呪詛のことばを吐きながら街道の方に逃げました

ぼくは切れた下駄を放りだしてその反対側の暗闇の方へ走りました
ーお前が逃げちゃいけない 追いかけろ追いかけろーあいつが叫んでいました
だがどうしてそんなことができるというのか

ぼくは暗闇のなかへ裸足で走りました ホトケサマから投げつけられた呪詛が追いかけてきました ぼくは走りつづけました ぼくはなんだかすべてが終わったと感じました 自分を(ぼくもあいつも)消してしまいたいと思いました 
夜の奥へどこまでも走りつづけました


 3、


古賀志山の崖の下に ぼくは立っていました
むき出しになった垂直の裂け目が天を目ざしていました
荒れ狂う魂を鎮めるために人は太古の昔からここに来たのでしょうか

崖を見つめているうちにいつのまにかぼくは
崖の脈拍に包まれていました 女神の襞に包まれていました
不意に発作が襲ってきました

ぼくは堪えられなくなって
西陽に温められた磐肌にからだを密着させました
波のような陶酔が押し寄せ包みこむものに広がりまた押し寄せてきました

ぼくのなかで何かが起っていました
足の裏から会陰へ会陰から頭頂へ変化が起っていました
一匹の爬虫類が 姿をあらわしました

一足一足 崖を登りはじめました
その爬虫類が崖にしがみつくと 
崖はやさしく抱きよせました 

青い爬虫類が
身をよじらせながら 一足一足
崖の女体に分け入っていきました

 4、 

転落事故が その直後に起ります
オーバーハングで身動きがとれなくなっていたぼくが
やっと右手を延ばして掴んだ細い椎の木が根元から抜け落ちてしまったのです
ぼくの身体は空中に放りだされ一回転して落下していきます 

落ちていくぼくを真上からもうひとりのぼくが見ていました
からだが鷹の巣のような岩棚に叩きつけられる瞬間も見ました
岩棚には柔らかな枯れ草が敷き詰められていたことも見届けました

鯨のように息を吹いたあと 少しづつ意識が戻ってきました
痺れているからだの底からイノチが殺到しました
ぼくは確信しました
ぼくは生み落とされたのだ!

柔らかな夕陽が山を包んでいました
鷹の巣の岩棚から遠くの村の夕餉の煙りが見えました
生まれたばかりの赤児になってぼくは古賀志の胸に抱かれていました
ぼくは深く息を吐きました 空と山と大地も深く深く息を吐きました


 5、

それからぼくは夢を見ないで眠りました
深夜の彷徨癖は止まりました 
吃音も消えました

それから神社の森は住宅団地になりました
ワリ山にはPC工場が建ち並びました
それからぼくは七度死に損いました

ぼくのなかの石器時代は滅びたのでしょうか?
いいえ 今こうして 
シャツを着替えています

あの頃のぼくはー
思わぬことに出会うたびに隠れてしまいます
暗闇で息を潜めています

ぼくの趣味はペットの飼育です
アオジタトカゲ アオカナヘビ ホソユビヤモリ グリーンイグアナ 
ベアデットドラゴンなどの目が 薄暗くしてある部屋のなかで光っています


注 古賀志山583mー宇都宮北西、日光連山の手前に鋸歯状に続く山並み。
  コガシヤマのコガシは動詞コガス(扱)の名詞形、草木等を引き抜く、根こぎするなどの意。
  また、コカス(転・倒)=倒す転がす横にする滑らす落とすなどの意がある。
  私は部屋の正面にいつもこの古賀志の崖を見ながら成長した。

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May 09, 2006

9、走リナガラ

 

  1、聴ク

止リナサイ ソコノ
走リナガラネムッテルヒト 
夢ミナガラサケンデルヒト
目ヲサマシナサイ

ショウガナイネ 
アナタハネムッテイルノデスヨ 
ハシリナガラ悪夢ヲミテイルノデスヨ
アクムヲトオシテ世ノ中ミテイルノデスヨ

イイエ アナタガ抱キシメテイル辛イ現実ナンテドコニモアリマセンヨ
イイエ アナタガ歎イテイル悲シイジジツナンテソンザイシテイマセンヨ
ミンナミンナアナタノアタマノナカデツクリアゲテシマッタモノデスヨ 

アナタガテバナソウトシナイクルシミハマボロシデス
傷ツイテイルノハアナタノナカノ「私」ダケデス 
ソノ「私」ガエガイタソラユメガ終ロウトシテイルダケデス
イイエ アナタガ失ッタトイウモノナドハジメッカラナニモナカッタノ!

アナタハ裸デウマレテ裸デシヌノデショウ
アナタガヤルベキコトハマルゴトジブンヲサシダスコトデショウ
イッサイヲ受ケトルコトガデキルカドウカソノ一瞬ヲイキルコトデショウ

メザメナサイ ユメノ痛ミヲ脱ギナサイ
ナニカヲジブンノモノニシタイトイウ迷イヲ捨テナサイ
ナニモモタナイコトデ一切ヲモツユタカサヲ思イナサイ

アノネ ヨロコビガナイナンテマチガッテイマス
アノネ ドンナニヒドイ一日ニモヨロコビハ根ヅイテイマス
耳ヲスマシテ見ツメテミツメラレテソレハ生マレテクルノデス
 
モウソコデ 止リナサイ
満タサレナイユメノツヅキ断チキリナサイ 
空シイ期待ヲカサネルキタイヲ捨テサリナサイ
モウ疑イト恐レト憤怒ノ王国ヲ出テイクノデス!

 2、木ニナル

サ コッチニキテクダサイ
住所氏名
ナンテイリマセン
ソレヨリ

裸ニ ナリナサイ
大キク 息ヲハキナサイ
ユックリト 歩キナサイ  
考エルノヲ 止メナサイ 過ギタコトヲ追ワナクテモイイノデス 

コトバヲワスレナサイ
アルク筋肉ノウゴキニ意識ヲムケナサイ
足クビトヒザト太モモガドノヨウニ働クノカニ注意スルノデス
一歩一歩 踏ミシメテイル足ノ裏カラ地ノ脈拍ヲ受ケトルノデス

子ドモノトキ走リマワッタ春ノ野原ニ出テイキマショウ
蝶々ヤ羽虫ヤ熊蜂ノ囁キニ耳ヲスマシマショウ
イチメンノ蓮華ノ香リニツツマレナサイ
身体ヲツラヌク生マレタテノ感覚ニミヲマカセナサイ

幽カナ空気ノオモタサヲカンジルデショウ
アノ草ムラノムコウノ田川デ溺レタトキノコトヲオモイダシマシタカ
釣リアゲタ銀魚ガ手ノ中デフルエル感触ヲオモイダシマシタカ
殴リアッタ悪童ノ鼻血ノ生温カサヲオモイダシマシタカ

アナタト外界トノ間ニ起ッテイルドンナニ小サナ変化モ受ケトリナサイ
変化ソノモノノナカニ身ヲ埋メサイ
ソウヤッテ「私」ヲ消シテイクノデス
「私」ガ消エルト アトニ残ッタノガ「命」デス

山々ヲ仰グ
土手ノ上ノ一本ノ椎ノ木ニナリナサイ
ソコニ立ッテイナサイ

ヤガテ アナタノ底ノソコノソコノソコ
根ッコニナッテ伸ビダスモノガアルデショウ
樹液ニナッテ立チノボルモノガアルデショウ
葉ッパニナッテフクラムモノガアルデショウ 


静カナヨロコビガ満チテクルデショウ
ソレヲ受ケトリナサイ
ソレニナリキリナサイ
シバラクハソコニ立ッテイナサイ 

ソシテアシタ
マタ出テイキナサイ
遠クヘ遠クヘ行キナサイ
ソシテマタ帰ッテキナサイ

 ***

アフーアフーアフー ワレヒトテンチカコミライアノ
ヨモコノヨモヒトツニイキヨゼンゴサユウヤチガイヤ
クベツマブタトジレバキエサルモノヲニョライショボ
サツボンテンリュウオウキシンシュジョウモアツマリ
タマエソラノシタゴガツノサトハイノチノマツリナニ
ヒトツダレヒトリカケテハナラヌナクテハナラヌイノ
チノホシニウマレシイノチ アフーアフーアフー

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8、ノック


 
はいはい どなたさまですか
はいはい ただいまでかけて おりますが

はいはい ぼくは ここには おりません
はいはい ぼくは ぼくでは ありません

いえいえ だれも ここには おりません
いえいえ だれも ゆくえを しりません

はいはい かえるか どうか わかりません
はいはい かえらない かも わかりません


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7、破産の人

 


乃木坂の「しもん」で呑んでたら
村雨さんの携帯が鳴って
彼は外に出て20分も話していた

ようやく席に戻ったら
おれに酒をつぎながら
あさって宇都宮でゴルフやりませんかと言いだした

たまたまおれは明日 高校時代に一緒に野球をやっていた清水の葬儀で
久しぶりに郷里の宇都宮に帰る予定だと話していたのだ
都合はつくけど なんで急に?

いえじつは いまの電話はKMからで 村雨だけには話しておきたいんだが
来週 破産申請する というんですよ
え あそこが?

それで あさって日曜日 ゴルフでもやろうかと約束したんです
会社はつぶれても自己破産になっても人生は終わらないって
励ましてやりたいんですよ と言った

もちろんゴルフにつきあった
KMは会社のことに触れようとせず スイングのアドバイスばかり求めてきた
チョコレート18枚とってしまった

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6、シヌマデイキル

 

いやあ、私の会社だって
五年前に経営危機がありましたよ
あのときは参りました 会社もですが私もぼろぼろ
会社が怖くなって朝出社することができないんですよ
夜は逆に会社を乗っ取られやしないかと不安になってデスクを離れられない
身体もどんどん衰弱して役員会の一時間にも耐えられなくなった
自殺一歩手前でしたね

しかしどうも
あなたは違うみたいです
元気いっぱいでちっとも落ち込んでいない
会社も自分もピンピンしてるみたいじゃないですか
状況はもっともっと深刻のはずなのにねえ
メインオフィス撤退したんでしょう スタジオ閉鎖したんでしょう 
社員もリストラしたんでしょう CXもTXもBSも番組提供を降りて、著作権も手放したんでしょう いろんな会社に迷惑かけているんでしょう アーチストにもプロデューサーにも不義理したんでしょう 捨てても捨てても捨てきれないほど売れ残りのCDの山を処分しているんでしょう
よくもまあ、平然としていられますね
これって経営ポリシーの違いですかね
それともストレスマネジメントですか 精神修養でしょうかね やっぱり

いやいや、とんでもありません ぼくだって毎日くじけております
ただ一日一日やるべきことだけに集中するようにしているだけなんです
いや それでも落ちこみますよ 真夜中の3時頃は どん底ですよ
そのときどうしているかですか?ー「オマジナイ」唱えてます
オマジナイ?
ええ シヌマデイキル シヌマデイキル シヌマデイキル シヌマデイキル シヌマデイキル って唱え続けるんですがね
効き目はありますか?
唱えているうちに夜が明けてくるんですわ ハハハ

ひゃあ なるほど なるほど
経営協力の件はともかくとして
今度うちの幹部教育のための講演などお願いしましょうか ハハハ

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May 07, 2006

5、 オワリノハジメ

モウオワリデス
ゼツボウデス
トソンナニイイハルノナラ

ソノモウオワリ
ゼツボウトイウモノヲ
メノマエニ出シテミセナサイ 

アナタハ
変ワロウトシテイルダケデショウ
変ワルコトヲオソレテイルダケデショウ

ナニカガ
始マロウトシテイルダケデショウ
始マルコトヲオソレテイルダケデショウ

ヨウヤク
アナタガ生マレヨウトシテイルノデショウ
モウイチド生マレルコトヲ喜ブトキナノデショウ

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4、たまご


どろ沼にはまっても底の底までみきわめることにしなさい
どんなにくるしくても恐ろしくても目ざめていなさい

迷いに囚われないようにひたすらきょうの予定に集中しなさい
どんな小さなゴールでもそれをめざしなさい

会社はつぶさないとみんなに約束しなさい
誰もいなくなっても自分は逃げないと言い切りなさい

ひとに社会にほんとうに役立つ会社がいちばんもうかる会社になるべきです
だからその日のために企画書を書いています と

電話がなったらためらうことなく受話器をとります
苦手なひとがたずねてきても居留守などはつかいません

やっぱり返済要求であっても笑顔などうかべてせいじつに応対します
不良債権に行きづまっております しばらく支払い猶予をねがいます などと

それでも大声でせまってくるけれどただニコニコしていればいいのです
やくざものが脅しにきてもあなたは喧嘩になったらまけないのだから

ふかく息をはきながらサングラスのなかの目をじっとみつめていればいいのです
そしてたんたんと話します

たいせつなのはだれかを破滅させることではなくご自身をすくうことでしょう
自分が幸せになりたければまず他人の幸せを考えなさい!

とマザーテレサも言っております
おたがい win win になるような方法を考えましょうかー

それでもふいになにもかも投げだしたくなるときがあります
なにもかも空しくなってしまうことがあります

がらんどうになった野外劇場にひとりとりのこされている自分をかんじます
45度上の空をみあげたままつぶやきます

しばらくお待ちください
いまわたしはたまごを生むところです

ほらわたしのからだにすこし赤みがさしてきたでしょう もうすぐです
たまごを生んだらあなたにもひとつさしあげますからね ハハハハハハハ 

やみ夜にもあさがやってきます
まもなくそのときがやってきます

わたしがあなたを生んだときのようにあなたもあなたの奇蹟を生んでみなさい
あなたじしんのたまごを生んでみせなさい

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3、暗夜飛行

      
おもいきって
とびたちなさい
やみよのがけから

このさきに
みちはない
ここからはとぶしかない

だいじょうぶ とぼうとおもえばとべる
むかしむかしじゆうにそらをとんでいたのだから
なにもしんぱいなんていらない
つばさがあるのだから

わすれてしまったの
めをつむればうかぶでしょう そらをとぶゆめ じゆうにとんでいるゆめ
なにもおそれずだれにもとらわれず しあわせだったでしょう
そしてあなたがそらをとぶためにうまれてきたことをおもいだすでしょう

だれもとんでいない?
だからひとりだけめだったりしないように
だれにもうしろゆびさされることのないように
あんぜんちたいのくさむらにみんなといっしょにいきをひそめていようというの

じぶんでとぶこともおよぐこともせず 
せかいのふしぎをいのちかけてたのしむこともせず
いきることをまたさきおくりにしようというの
それであなたのはらのむしがおさまるというの

なんのためにとぶ?
そんなことはわからない 
わからないけどとびたいのでしょう わからないからとぶのでしょう

それでもこわい?
こわくてもとびたいのでしょう 
こわいからこそ とぶのでしょう   
 
これまであなたはあらゆるいいわけをよういしてきた
ゆめよりげんじつとじぶんにいいきかせ こいびとができればこいびと
おかねがなければおかねをいいわけにひたすらとぶことからにげてきた
そのくせあきらめきれずにむりょくかんにとらわれてきた

なぜあなたはおそれながらもそれをあきらめきれないのだとおもう?
それがいきることだからでしょう
それはあなただけのねがいじゃないからでしょう
あなたのよろこびをよろこびとするみえないそんざいがあるからでしょう

もういきることからにげてはだめ
じぶんをごまかしてはだめ
こわいならかくさずにこわいよ!といってしまいなさい
それでもとびたい!とちからいっぱいさけびなさい

せおっているおもにをおろしなさい
かなしみおえていないかなしみ できなかったことへのおそれ
じぶんをゆるせなかったこうかい まだむねをいきぐるしくしているぜつぼう 
あなたのくらやみでいきづいているぼうれいたちをときはなちなさい

くらいよぞらに 
つきがのぼるまで たきびをして

こころにとじこめていたものを もやしなさい
ひとひらひとひらひのはなにして くらいよぞらにときはなちなさい

それから とびたちなさい 
きがのびるようにはながひらくように
そしてすだちをむかえるハヤブサのように
からだにかいてあるとびかたのおてほんにまかせ

かなしみはよろこびのためにあり
えいえんのじかんはいまこのときのためにひらかれ
あなたのまま よわいままのあなたのまま
かくされているいきるちからいきもののちからにみをまかせ

なぜとぶのかとばねばならないのかなどととうこともなく
とべないときはとべないじぶんをけんめいにいきるために
かぜにのって さあ  

とびなさい  
くらやみのむこうへ 
よあけまえのそらへ
いのちかけてとびなさい いのちかけてとびたちなさい

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May 06, 2006

2、真夜中のクリスマス


めをさましなさい めをさましなさい
ひとりですわっていたら
こごえてしまうよ
 
ねむってはだめ ねむってはだめ
ひとりでねむったら
しんでしまうよ

こんなに
つめたくなって
なみだをながして

このよるに
だれにもしられず
しぬつもりだったの

いいえ
あなたはまだ
しんではいない

いいえ
しんでいくあなたを
むかえにきたのではない

いきようとする
あなたのこころが
わたしをよんだ

わたしはあなたのこたえ
あなたのといが
わたしをうんだ

どうぞはなして
わたしはあなたに
みみをすます

そうなの
つらいことが
あったの

なんどもなんども
おそろしいことが
つづいたの

それでもあなたは
くじけなかったの
なきごとだけはいわなかったの

こころをあずけるひともなく
ひとりぼっちのえがおをつくり
だまってこらえていたの

それなのに
なんだかこんやは
こらえきれなくなってしまったの

じぶんもひとも
いきていることも
むなしくみえてしまったの

さむさにふるえ
かいのようにとじてしまったこころのそこで
ひっしにわたしをよんだの

あんしんして
ずっとあなたのそばに
わたしはいるよ
 
かなしみのあるかぎり
かなしみのそばに
わたしはいるよ

わたしをみつめて
わたしにさわって
わたしをだきしめて

わたしをかんじて
わたしのなかに
はいってきて

わたしのなかで
かなしみを
おわらせて

わたしのからだのなかから
あたらしいあなたを
うみだして!

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あらかみさんぞう詩集 『暗夜飛行』

1、闇の底から


もうすこし
辛抱しなさい
まもなく
朝がくるからね

怖いのなら
いっそのこと
目を見ひらいて
その暗闇を見つめてみなさい

逃げようとするから
追いかけてくるのです
見たくないと思うから
見せようとするのです

気づいてないのですか
いまみているのは
あなたがよび寄せた
あなた自身の暗闇です

だがじっと見つめていると
その底の底で生まれようとしている
幽かな光の胎児の動きを感じるでしょう
闇が深ければ深いだけ生まれてくる光は明るく輝くでしょう

もうすこし
辛抱しなさい
まもなく
朝がくるからね

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あらかみさんぞう 詩集 『暗夜飛行』

5月中に出版予定の私の詩集『暗夜飛行』をブログに掲載します。
これは私のはじめての詩集です。というより詩を書くのさえこの詩集に載った
ものがほとんど最初の経験です。(電通に入社当時一度だけ友人の平井誠一が
やっていた「響」という同人誌に3編書いたことをのぞけば)ーその平井がそ
れから何十年か経ってこんどは「詩風」という個人誌を出して、その3号に私
にも書いてみないかといってくれたのです。
平成13年9月10日、私の会社アートバンクの披露を青山の会社の隣のスパ
イラルホールの地下CAYに400人ほど招待してやった。そのとき平井も沖縄
の版画作家「睦念」の作品を祝いに持って来てくれた。それがきっかけで詩風
に書くことにしたのです。ちなみにその披露の翌日がアメリカの9.11のテロ
でした。

9.11と同時に発足したアートバンクはやがて絶頂から墜落するような経過を
辿りました。その私事と詩の内容は当然ダブっているはずです。

「暗夜飛行に寄せて」を書いてくれた評論家岡田芳郎さんは、私の同人誌にの
った詩をすべて読んでくれてそのたびにありがたい「評」を頂いておりました。
文字通り私の暗夜を行く先を照らしてもらったのです。

あらかみさんぞう詩集 暗夜飛行

1、 闇の底から     
2、 真夜中のクリスマス               
3、 暗夜飛行
4、 たまご
5、 シヌマデイキル
6、 破産の人
7、 ノック
8、 走りながら聴く声
    Ⅱ
9、 古賀志原人奇譚
10、花と君
11、恐竜 
12、にょらい
13、にらめっこ
14、にらめっこ2
15、キャッチボール
16、生きること
17、あなたではない
    Ⅲ
18、鬼のいる風景
19、日曜日の庭から      
20、春、このとき 
21、恋歌 
22、君へ
23、プレゼンテーション
24、問い 
   


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頂いた序文

            『暗夜飛行』によせて
         
              岡田芳郎

サン・テクジュベリの「夜間飛行」を連想させる題名のこの詩集は、自己救済の
唄である。それなのにふしぎな生命感にみたされている。
 救いを求めながらそれを他者に求めない。
 傲岸不遜な魂がじぶんのやめに祈っている。自尊心にあふれ強い眼差しを保ち
つづける男は、まっすぐな姿勢をくずさずよりかからずひとりで立っている。
 はげしい意欲が男をつきうごかし、前に足をはこばせる。なにの力によって導かれているのかわからないが、いのちの命ずるものであることだけはわかる。本能のおもむくまま原始のよろこびのにおいを察知し、やみくもに動き回る。野生の咆哮が詩集全編にこだましている。
 野生の動物であるこの男は、身体中に生傷が絶えない。切りつけられた傷もあれば自らつけた傷もある。血のにおいが男を眠らせない。闇の中で目を光らせ獲物をさがす。傷が男をふるいたたせる。
 この詩集は自分のための子守唄である。
 自分へのよびかけは、なぐさめとはげましにみちている。母親の声であり、もうひとりの自分の声だ。傷をなめ、再生の意欲をかりたて、背中を押す。見つめる視線はあたたかく、みつめられる男は光の中にいる。
 はてしない自問は連祷の形をとり、経文のようだ。くりかえしくりかえし問うことが、願いであり、祈りだ、念じつづけることで自分を保ち、現実に立ち向かう力をあたえる。
 「暗夜飛行」は、寓話であり、民話だ。
 オプチミズムとアニミズムの息づく空間だ。生命のエネルギーがもえており、健康な肉体が強く匂う。読む者を勇気づけ、元気づける。苦悩は深いがここに絶望はない。
 不思議な明るさと安心が詩を支えている。
 「暗夜飛行」はレトリック、メタファーといった表現の遊びはなく、心の叫びとつぶやきがそのまま書き記されている。男のモノローグであり、気分に問いかける
ダイアローグともいえる。
 激しく行動する男とそれを見つめるもうひとりの自分。
 この詩集は、男の心のヤジロベーのようなものかもしれない。

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