林檎の木と皿の伝言
あらかみさんぞう
また
出かけるの
遠くまで行くの
幻を追いかけ
這いまわるの
そう
じゃ
この林檎の木の苗をあげる
水やりを忘れないでね
迷ったら木のほとけに聞いてね
眠る前に家中のお皿を空っぽにして並べておくといいね
幸せが盛りつけられるかどうか楽しむのね
こんどは
アタマの無駄遣いをやめなくちゃ
考えても仕方のないことは考えないようにしなくちゃ
コトバの毒には気をつけなくちゃ
悩みを悩ませ 病気を引き寄せ 無明に踊らせ
あなたのいのちを傷つけるから
イヤなやつとかダメな私とか
そんなことできるわけないよとか
またやっちゃったとか
もう絶望だとか
私はひとりぼっちだとか
すぐにスタンプを押すのはやめなくちゃね
怖れなくていいの
苦しみはよろこびのためにあるのだから
壊れるたびにあなたが生まれているのだから
死を経験することはあなたにはできないのだから
ただ今を生きるよろこびをわれを忘れて生きるのだから
愛するひとの喜びをよろこびなさいね
そのひとの苦しみをくるしんではいけないのね
冷たいひとはあなたを求めているのね
怒ってるひとは必死にあなたを求めているのね
欲しがらなければ傷つくことはないのにね
目の前のひとに生きものに物ごとに
あなたを捧げてしまうのね
なにもかもあげてしまうのね
え なんのために? なんのためでもない目的なんてない
え いいことある? なんにもない
むかし印度から達磨大師がやってきた
仏教に帰依し寺院を建て僧を育成した梁の武帝が訊いた
私にはどんな功徳があるか
どんな御利益があるか
達磨は答えた
無功徳 なにもない
武帝はむっとした
では 仏教とは何なのか
達磨は答えた
廓然無聖
聖も俗もない空っぽ
雲一つない青空のようなものですよ
武帝はむかっ腹をたてた
お前はお前は一体ナニサマだ
達磨は言った
不識 わしゃ知らん
今日はいい日だね
今日は出発日和だね
遠くまで
行ってらっしゃい
雲一つない青空が広がっている
明日は世界が滅びるかもしれない
それでもあなたは林檎の木を植える
空っぽのお皿が並べられる
そこになにが載るのか載らないのか
誰も知らない
あらかみさんぞう2007
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