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March 13, 2008

林檎の木と皿の伝言


あらかみさんぞう 


また
出かけるの
遠くまで行くの
幻を追いかけ
這いまわるの
そう

じゃ
この林檎の木の苗をあげる
水やりを忘れないでね
迷ったら木のほとけに聞いてね
眠る前に家中のお皿を空っぽにして並べておくといいね
幸せが盛りつけられるかどうか楽しむのね

こんどは
アタマの無駄遣いをやめなくちゃ
考えても仕方のないことは考えないようにしなくちゃ 
コトバの毒には気をつけなくちゃ
悩みを悩ませ 病気を引き寄せ 無明に踊らせ
あなたのいのちを傷つけるから

イヤなやつとかダメな私とか  
そんなことできるわけないよとか 
またやっちゃったとか  
もう絶望だとか 
私はひとりぼっちだとか
すぐにスタンプを押すのはやめなくちゃね

怖れなくていいの
苦しみはよろこびのためにあるのだから
壊れるたびにあなたが生まれているのだから
死を経験することはあなたにはできないのだから
ただ今を生きるよろこびをわれを忘れて生きるのだから

愛するひとの喜びをよろこびなさいね
そのひとの苦しみをくるしんではいけないのね
冷たいひとはあなたを求めているのね
怒ってるひとは必死にあなたを求めているのね
欲しがらなければ傷つくことはないのにね

目の前のひとに生きものに物ごとに
あなたを捧げてしまうのね 
なにもかもあげてしまうのね
え なんのために? なんのためでもない目的なんてない
え いいことある? なんにもない

むかし印度から達磨大師がやってきた
仏教に帰依し寺院を建て僧を育成した梁の武帝が訊いた
私にはどんな功徳があるか 
どんな御利益があるか
達磨は答えた 
無功徳 なにもない

武帝はむっとした 
では 仏教とは何なのか
達磨は答えた 
廓然無聖 
聖も俗もない空っぽ 
雲一つない青空のようなものですよ

武帝はむかっ腹をたてた
お前はお前は一体ナニサマだ 
達磨は言った 
不識 わしゃ知らん 

今日はいい日だね
今日は出発日和だね
遠くまで
行ってらっしゃい

雲一つない青空が広がっている
明日は世界が滅びるかもしれない
それでもあなたは林檎の木を植える
空っぽのお皿が並べられる
そこになにが載るのか載らないのか 
誰も知らない   

あらかみさんぞう2007

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